「アクアリウム 第一章 アトランティス」

 この話の原型となったのは、私が高校生の時、友人にそそのかされて書いた原稿です。なので、ずいぶんと古い話になるのですね。原稿用紙に手書きで、40枚弱。今も手元に残っていますが、恥ずかしくてとても読み返せやしません。
 ある日、寝転がって空を見上げたら、一杯の水を湛えた青い太陽が浮かんでいて、その水面でイルカのような生き物が跳ねた……というような夢を見たことがきっかけで書いた話、だったように思います。
 あるいは、「この街は海に沈み続けているのだ」という一言を書きたいがために考え出した話、だったような気もします。
 読み返す度、この話たったひとつをひっさげて、創作サイトを起ち上げた当時のことを思い出します。懐かしいというのとはちょっと違いますが、何はともあれ思い入れのある話、ではあります。

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  「アクアリウム 第二章 ユキ」

 第一章とは違う街が舞台です。けれども同じ世界の話なので、微妙に重なり合っています。去る者と留まる者、それぞれに抱く想いはあれど、書きたかったのは残されるものの哀しみでした。
 そしてこの話は、ひとつの曲、一冊の本と出会ったことから生まれました。
 冒頭の、「青いクレヨンで画用紙を塗りつぶしている」というシーンは、とある曲の歌詞からイメージしたもの。「ユキ」というのは、私の大好きなある小説の登場人物から採った名前です。カタカナなのがミソ。
 ……さっきから、「とある」だの「ある」だのとぼかした言い方をしていますが。これは決して「秘密だから明かせないわ」などというわけではありません。ただただ、照れくさくて明言できないだけなので、どうぞご勘弁を。

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  「アクアリウム 番外編 フタタビ」

 時間的には、本編第二章と来るべき第三章の間で起こった出来事、ということになります。第二章のふたりも登場します……というよりも、第三章に向けて少し大きくなった「彼」を書く練習としての意味合いが強い話だったりします。
 旅する者と旅を終えた者との邂逅がテーマ。どうしても使いたかったのは、「旅人の瞳」という言葉でした。
 しかし、どうもこの話は「物語」という雰囲気が希薄ですね。むしろ、旅立ちの定めについての解説のようになってしまった……。
 あえてはっきりとは書かなかったのですが、語り手の「私」は第一章に登場しています。最後に尻尾を振っていますので、お分かりいただけるかと思うのですが……。どうでしょう?

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  「猫のいる風景〜黒猫」

 別名、「縁側の茶のみ話」。ほぼ実話です。黒猫との攻防戦も、鰤と大根も。
 ただし実際には、私が遭遇した「目の前を横切った黒猫」と「目の前を横切ってやった黒猫」は、恐らく別人(別猫)だったと思われますが。
 どこにでもありそうな日常を細かく丁寧に描くことがこんなに楽しいとは、私にとって思いがけない発見でした。そしてこの話は、サイト起ち上げ以来、最も多くの方に読んでいただいた話だと思われます。この場をお借りして、お礼の言葉を。ありがとうございます。
 最語に、望月教授のモデルと(勝手に)させていただいたM教授にも心からの感謝を。私は、先生の講義が大好きでした。

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  「白い魚」

 まず、台詞ありき。ひょんなことから思いついた「日当たりが悪いんだ」という一言の台詞のみから、どんな話を捻り出すことが出来るだろうかという試みの結果が、この話。
 実は当初、「金魚鉢を抱えてやって来る」という現在の設定とは違い、もうひとつ「トマトの鉢植えを抱えてやって来る」という案も考えていました。幻のトマトバージョンがどんな話だったのか、もう私自身にも思い出せませんが。
 「金魚鉢で熱帯魚って飼えるの?」と突然人に聞いて呆れられた、なんてこともありましたっけね。今となっては懐かしい思い出です。
 そして、砂糖入りホットミルクと砂糖なしホットミルクの色の違いなんて、私には分かりません。

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  「白く・儚く・歌う」

 競作企画「紅に帰る」に参加させていただいた作品です。夕焼けの話だというのにタイトルは「白」。
 同じテーマでたくさんの作家さん方と共に作品を書くんだもの、どうせなら何かしら独特な話が作れないか……。天邪鬼な血が騒いだ結果、複数視点が次々に切り替わり、伏線は貼りっ放しで回収せず、最後の台詞は意味ありげ、という、こんな話が出来上がりました。本当に天邪鬼。
 作者である私は、結構好きな話だったりします。難しかったけれども、楽しかった。そりゃあ、これだけ好き勝手書いたんだから、楽しくないはずはありません。
 人形師の起こした「事件」については、別の話として書いてみようかとも考えています。蛇足だろうという懸念が拭えず、予定は未定なのですが。

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  「贋作 小さい秋みつけた」

 記念すべき、お題バトル初参戦作です。いやはや、こんなに楽しいものだとは。
 虫嫌いの私が、ほぼ唯一好意を抱くことができるのが、ダンゴムシなのです。突っつかれると丸くなるところにも、親近感が持てます。
 そんな彼らを主人公に、何か書いてみたいという思いは、実はずいぶんと前からありました。この話で長年の野望を果たすことができ、作者は非常に満足です。
 定められたお題以外にも、童謡「小さい秋みつけた」に登場する単語を、随所に織り込んであります。興味のある方は、歌詞をお手元にご用意いただくと、面白いかもしれません。

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  「三月兎とバラッド・オレンジ」

 「一夏の香水同盟」に参加させていただいた短編です。締め切りを大幅にオーバーしての提出にも関わらず、快く仲間に加えていただきまして、ありがとうございました。この場を借りて、お詫びと御礼をば。
 まず初めに題名ありき、の作品だったため、作者本人も「はて三月兎とは何者ぞ」「さてバラッド・オレンジとはなんぞや」と頭を抱えること数週間。ようやっとこのような形に落ち着きました。
 この話の元となったのは、「三行小説」としてちまちま消化中の、あるお題用に考えた短文です。65文字が23枚に化けたわけですね。

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  「バベルの塵」

 「覆面作家企画 わたしはだあれ?」に参加させていただいた短編です。
 作者を推理していただく、という企画の醍醐味を味わうため、私が仕掛けた細工は「普段より漢字多め、いつもより角張った文体」という、実はただそれだけだったのでした。中身の方は、隅々まで私好みに仕上がっているような気がいたします。
 『望楼館追想』という小説を読み終えた時、頭の中にぼんやりと立ち上がったイメージを練り上げた結果、生まれた話です。それにしても私は、画家というモチーフが好きなようです。
 最後に、推理して下さった皆々様に拍手を。主催者様にスタンディングオベーションを。

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  「眠る羽音は雨上がりの夢を見る」

 企画本「ココハコ」に参加させていただいた短編です。
 サイト掲載に当たり、一部手を加えましたがストーリーに変更はありません。
 雲を道連れにする旅行者、というもともと暖めていた話を出発点に、火事場を歩く青年→不死鳥→灰→雨の降り続く街→失踪した姉を追う妹、と(少々飛躍気味の)連想ゲームを辿った結果、出来上がったのがこれ、でした。
 葉書の差出人については、もちろん作者である私はある解答を持っているのですが、真実は必ずしもひとつではない、と言うに留めたいと思います。

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  「まほろばを泳ぐ赤き魚」

 競作企画「小説福袋」に参加させていただきました。テーマは「幸せ」です。
 ホットケーキは四角いものだと信じて疑わない娘と、コップに注いだ金魚を飲み干す父親、という長らく頭の中に居座っていた場面をようやく形にすることができました。
 不器用な主人公に、幸あれ。
 ちなみに、「まつろわぬ王女」のエピソードは別の作品にもちらりと顔を出しております。いつか、彼女の物語も腰を据えて綴りたいものだと思いつつ。
 最後になりましたが、企画主催者様に心よりの感謝を捧げます。

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  「世界の果てへ続く坂」

 字書きさん・絵描きさん協作企画「いろは」に参加しています。「海」をテーマに先行作品を提出し、絵描きさんは字書きさんの作品へイラストを、字書きさんは絵描きさんの作品へ小説を、協作作品として創作する、という心躍る企画。当作品は、その先行作品です。
 急坂を巡る話を書く、という計画は数年前から温めていたのですが、「坂の向こうには何があるのか」を思い決めた途端、一気に全てが転がり出したように思います。結果、これまたずっと温存していた「夏の思い出と共に彷徨う少女」の物語をも巻き込む展開になりました。レッテピーノというのは造語ですが、イメージとしては「夏の娘」というような意味だと思っていただければ……。
 
 創作脳を刺激する素敵な企画に参加できたこと、この場を借りて主催者様に御礼申し上げます。ありがとうございます!

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