「赤い空 銀の鱗」 ![]() ![]() ![]() ![]() * 序章 * 手を伸ばせば届きそうなほど近くを、君は泳いでいった。 鋼鉄の鱗は、言葉と記憶のかけらが降り積もった虚構の海を泳ぎ渡るため。 硝子の瞳は、失ってしまった懐かしいものたちを二度と映し出さないため。 そうすることでしか、君は生き残っていけなかった。 僕たちの目に、君の姿はとても自由に見えた。 網目のような水路を辿ってどこへでも行ける君が、僕たちは羨ましかった。 だけど……。 君も、僕たちと同じように寂しかったんだね。 君も、僕たちが望んだようにどこかへ帰りたかったんだね。 だから君は、僕を見つけた。 ひとりぼっちになってしまった僕を……。 君のいるその場所へ、僕も連れていって欲しい。 懐かしいあの場所へ、僕を連れ戻して欲しい。 僕が本当に望むのは、どちらなのだろう。 ねえ。君にならば、分かるんだろうか。 ![]() ![]() ![]() ![]() 進む→ 創作品へ 入り口へ |